助けて欲しいのは回りの方じゃ

ワシがお寺の本堂でプレスリー聴いておった。ワシよりちょいとだけ若い、村のオヤジの息子が会社に就職したんじゃが、その息子が、会社で人の目、人の言うことばかり気にしていて、我が子ながら謙虚過ぎて可哀想じゃとそこのオヤジが言うてきた。

オヤジ
「まぁ、我が子ながら、周囲に気を使う、ホンマ、ええ子じゃが、あれじゃ、可哀想じゃ」

ワシ
「フ〜ンっ‼︎
ワシは鼻先でわろうた(笑)

オヤジ
「自分で決めれば良いことを先輩方の意見をと聞いてまわる謙虚さや。ホンマに腰が低い」

ワシ
「そりゃ、良かったね〜♪」
と言って、木魚枕に本堂に寝そべって鼻毛抜いた。

オヤジ
「良かったら、わしがわざわざ和尚のところに相談になんか来んがな。」

ワシ
「そんなお利口な息子さんなら、一体パパさんは何をお悩みですかのう?」

ワシは袴を尻の 下までずり下ろして尻をかいた。気持ち良かった。

オヤジ
「そんなええ人間を回りの奴らは嫌がっておるらしい。
息子の健気な気持ちが通じないとは情け無いご時世や。」

ワシは
「そりゃそうじゃろうな(笑)
めでたいね♫」
と言って、本堂の鐘を叩くバチを股に挟んで左右にツイストしてみた。

オヤジ
「和尚、そんなアホなカッコしとらんで考えて下さいよ。」

ワシは鼻くそをホジリながら
「何を?」

オヤジ
「可哀想な息子の助け方でんがな!」

ワシは
「阿呆、助けて欲しいのは回りの方じゃ。
お前の息子は周囲に気を配ってるんやないわい。
回りに助けて欲しいから、嫌われんように、オドオド、オドオド愛想振りまいておるだけじゃ。
『みんなを怒らせたら、いざと言う時に助けてもらえんから、みんなに言うこと言われん。』
そう思って卑屈な態度をとってる。

気が弱そうに見えて、甘えて他人を働かせようと考えておる太い奴だ。
嫌われて当たり前のナマコみたいな太いだけのグニャグニャ男、みんなに嫌われるわい(笑)」

オヤジが
「そ、そうやろか?」

ワシが
「お前の息子を採用してもた会社が哀れな話やな。

ええか、オヤジ、人間の悩みとはえてしてそういうもんじゃ。

『人がええ』と言うのは、一皮剥けば胡散臭いことが実に多い。」

オヤジが
「そう言えば、和尚も小学校でよしこちゃん、中学校でみゆきちゃん、35歳になっても伸子ちゃんに騙されておったな。みんな可愛かったが、腹黒ドス子だったな。」

わしが
「お前、それ以上わしの黒歴史を喋ったら殺す。
特に最後のは言うな。
ノーメイクの35歳の伸子に街で出会って『初めまして』と挨拶したのが恋の終わりやった。
わしはホンマに他人やと思って挨拶したんや。今から思えば普段は特殊メイクやで。

会社というのはな、
『うちの会社に入らなくても、例えひとりでも、こいつは、やっていける』
って人間が欲しいんや。
また、本物の社長は揉み手する社員より、『これは違います』と正しく、かつ礼儀正しく言える人間が欲しいんや。

大事なのは『独立自尊』や。
でなければ、お前の息子は、みんなに嫌われんために犯罪に加わる愚か者になるわい。

人間関係は難しいというが、たいがいは他人を頼る気持ちから生まれるのや。
他人に何かを期待すると弱くなる。
頼る気持ちを捨ててみい。
この人が素直ならと考えるのも期待の内や。
楽になるし、強くなれるし、みんなに好かれるわい。

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