和尚さん、僕はふられたんです

生真面目な青年、清吉がトボトボ歩いておる。うつむいて、泣いておる。みっともないな。

清吉
「和尚さん、僕はふられたんです。」

わし
「ご苦労はん!」

清吉
「僕はもう死にたいです」

わし
「さよなら、さよなら、さよなら。
あ、お前の年じゃ淀川長治しらんな」

清吉
「何故、僕はふられたんですか?」

わし
「お前に魅力がないから」

清吉
「僕は彼女に対してトコトン一生懸命だったんです」

わし
「そんなもん、女側の知ったことか(笑)。
お前、こんな小唄知らんじゃろな?
♪♪嫌なお方の親切よりも♪♪
♪♪好きなお方の無理が良い♪♪
ってな(笑)」

清吉
「わし、どうしたらええのん?」

ワシ
「自分の好きなことを好き放題やって、お前という男の魅力を出すことやな。
恋愛は男がどう頑張るかやないわい。魅力ある男には女は勝手についてくるわい。
となり村の拓哉はお前が泣いとるうちにええ思いしとるよ。
もしかしたら、お前をふった女は、今、拓哉と腰ふっとるかも知れんな。こりゃ、傑作じゃ(笑)」

清吉
「やめてー‼️そんな言い方‼️

ワシ
「そんなもんやぞ」

清吉
「和尚、女から見て男の魅力とはなんやろかな?」

ワシ
「生存と繁殖や。これを仕組んだのは神様やな。
この男は私を食わしてくれる。
生きられる。良い子供を残させてくれる。
つまりは能力であり容姿なりの良い遺伝子を求めるのは神様が仕組んだプログラムやな。それが摂理やな」

清吉
「ほな、和尚さんは、容姿も悪けりゃ能力もない僕に『死ね』言うんか?」

わし
「そやから、魅力出せと言うとる。お前が変身する必要はない。
お前を生きろ。
お釈迦さまの言葉にな、『拈華微笑』という言葉がある。」

清吉
「その言葉は聞いたことがある。
野の花をお釈迦様が捻って見せたら、弟子の華笑だけが笑ったいう話やな。他の人には分からんかった。今でも、難しくて意味が解釈出来んという人も多いが、和尚は分かるんか?」

ワシは道の側に咲いてる蓮華の華のひとつを捻った。

ワシが
「花も人もひとつとして同じものはない。ひとつひとつが立派でまっすぐ自分を生きりゃ良いものを、せっかくの見事なおのれが首を捻って他の花を気にして見る愚かさじゃ。
ワシはそう解釈した。

どう頑張っても、チューリップの球根からひまわりは咲かん。
ま、外見で、拓哉とお前では違い過ぎるが、本当の人生の勝負とは球根として生まれたお前がお前の花を咲かせるかどうかじゃ。
球根のまま死ぬなら、お前の負けじゃ」

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